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大阪高等裁判所 昭和60年(行コ)40号 判決

大阪府豊中市東豊中町一丁目一九番六号

控訴人

北尾彰久

控訴人

北尾明美

控訴人

北尾有樹子

大阪府豊中市岡町南二丁目三番一六号

控訴人

山野員子

兵庫県西宮市甲風園一丁目一五番一八号

控訴人

木村千鶴子

兵庫県西宮市甲風園一丁目九番八-二〇五号

控訴人

有馬靖子

東京都渋谷区千駄ケ谷三-六〇-六-七〇四第一宮庭マンション

控訴人

南邦子

仙台市萩野町一丁目三番地の五

控訴人(湯目きよ江又は但野きよえこと亡但野きよ江訴訟承継人)

但野慶子

控訴人(湯目きよ江又は但野きよえこと亡但野きよ江訴訟承継人)

但野ろの

神奈川県横須賀市ハイランド四-一七-一

控訴人

北尾英樹こと五十嵐英樹

兵庫県芦屋市翌ケ丘町一一-三九

控訴人

片木泰三

神戸市中央区八雲通六丁目一番二号

控訴人

村山真一

右一二名訴訟代理人弁護士

保津寛

露口佳彦

佐々木信行

岡和彦

小野博郷

大阪府池田市城南町二丁目一番八号

被控訴人

豊能税務署長 田中侑

兵庫県西宮市江上町三番三五号

被控訴人

西宮税務署長 栂崎勇

東京都渋谷区宇田川町一番三号

被控訴人

渋谷税務署長 深澤廣

仙台市中央四丁目五番二号

被控訴人

仙台中税務署長 佐藤俊朗

神奈川県横須賀市上町三丁目一番地

被控訴人

横須賀税務署長 中島捷敏

兵庫県尼崎市西灘波町一丁目八番一号

被控訴人

尼崎税務署長 近藤勇

神戸市中央区中山手通三丁目一番三一号

被控訴人

神戸税務署長 小林博

右七名指定代理人

青山龍二

被控訴人

豊能、西宮、尼崎神戸各税務署長

指定代理人

中田孝幸

堀内眞之

被控訴人

渋谷、横須賀各税務署長

指定代理人

佐藤米昭

峰岡睦久

被控訴人

仙台中税務署長

指定代理人

鈴木憲一

寺門敏夫

船田貞雄

主文

控訴人らの本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  当事者双方の申立

控訴人らは、「原判決を取り消す。本判決添付別紙処分一覧表記載の各控訴人(但野慶子、但野ろのについては承継前の控訴人湯目きよ江又は但野きよえこと亡但野きよ江)に対応する各被控訴人が当該控訴人の昭和四八年分の所得税について同記載の日付でした決定処分(控訴人片木については更正処分中総所得金額が二五九万八三七〇円を、控訴人村山については更正処分中総所得金額が一六〇万六二一七円をそれぞれ超える部分)及び重加算税賦課決定処分(いずれも国税不服審判所の昭和五五年八月二五日付裁決による一部取消後のもの)並びに各被控訴人が当該控訴人に対し同記載の日付でした有価証券取引税の納税告知処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは、主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張

次に付加する外は、原判決事実摘示のとおり(ただし、原判決四枚目表九行目から一〇行目にかけての「別紙1記載の各原告」とあるのを「本判決添付別紙処分一覧表記載の各控訴人(但野慶子、但野ろのについては承継前の控訴人湯目きよ江又は但野きよえこと亡但野きよ江を指す。以下、双方の主張あるいは理由中の判断における「原告」あるいは「控訴人」についても同じ。)」と改め、同四枚目裏八行目から同九行目にかけての「北尾商事株式会社」の次に「(以下北尾商事という。)」を、同五枚目表末行の「三井不動産株式会社」の次に「(以下三井不動産という。)」を、それぞれ加え、同八枚目裏八行目の「改正前」を「改正前のもの。以下同じ。」と、同九枚目裏一行目の「昭和四八年六月六日」を「昭和四八年六月五日」とそれぞれ改め、原判決添付の「別紙2の(11)中の更正処分の年月日」欄の記載を「昭52.2.21」と改める。)であるから、これを引用する。

(控訴人らの主張)

1  本件株式の売買は一括売買ではなく、三回の分割売買である。

(一) 控訴人らを含む相続人らは、本件株式の処理について度々会合を持って協議した結果、もし北尾商事の資産の大部分を占める本件株式を一度に全部売却した場合、あるいは北尾商事を解散し清算後の残余財産を株主である相続人らに分配した場合には、いずれも莫大な税金が課せられ、相続人らが当時負担していた相続税すら支払えない事態になることが判明したため、税務の専門家である公認会計士及び税理士の指導と助言を受けて、所得税法第二九条第一項第一一号ハ及び同法施行令第二八条第一項による非課税規定に該当する方法で本件株式を分割売買することで合意し、そのことは売買の相手である三井不動産も十分に了解したうえで、相続人らと三井不動産は、昭和四七年一二月三〇日、本件株式売買に関する基本方針について次のとおり合意したのである(乙第二、第四号証)。

(1) 相続人らは、本件株式を三井不動産に売り渡すこととし、その株券のうち一万一〇〇〇株を昭和四八年一二月一〇日に、四五〇〇株を昭和四九年一二月一五日に、四五〇〇株を昭和五〇年一二月二〇日に交付する。

(2) 代金の支払は、株券交付と引き換えに支払うものとし、その都度別途契約書を作成する。

(3) 北尾商事は、増資完了後相続人らに対し六億円を限度に貸付け、この場合相続人らは、本件株式の株券を北尾商事と三井不動産が協議して定める信用ある第三者に預託する。

(4) 基本合意に基づく個々の取引については、相続らは一括して木村正治に委任する。

(二) 木村と三井不動産は、右基本合意に基づいて、個別契約の締結その他の種々の具体的な事務処理をし、後述するように、株券は一旦相続人ら代理人木村と三井不動産とが共同で三井中之島の貸金庫に保管した後、右基本合意に従って三回に分けて交付され、また相続人らは代金を三回に分割して受領したのであり、木村において、相続人らから委任された分割売買の権限を逸脱して、あるいは相続人らから新たに一括売買の委任を受けたため先に成立した分割売買の基本合意を破棄して、三井不動産との間に本件株式の一括売買契約を締結したような事情はないのであるから、本件株式は相続人らの委任の趣旨に従い、かつ右基本合意に従って三回に分割して売買されたものである。

2  本件株式の株券は、三回に分割して交付された。

(一) 本件株式の株券は、昭和四八年六月五日三井不動産の高橋課長に預けられた後、同月一九日前記基本合意に従って三井中之島の貸金庫に保管され、三井不動産と相続人ら代理人木村との間の共同保管、共同占有(木村を占有代理人とする相続人らの自主占有と三井不動産の他主占有とによる共同占有)となったが、昭和四八年一二月五日三井不動産の買受指定人である内外不動産との間に一万一〇〇〇株の株式について売買契約が成立し、同月一〇日内外不動産からその代金一〇億七八〇〇円が木村の預金口座に送金されたのを受けて、右貸金庫内の本件株式の株券のうち内外不動産に譲渡された一万一〇〇〇株の株券は、簡易の引渡により三井不動産を占有代理人とする内外不動産の自主占有となり、内外不動産と相続人らが本件株式の株券二万株を持分割合を一一対九として共有し、かつ三井不動産と木村を代理占有者として共同占有している状態となって、その状態は昭和四九年二月一八日現実に内外不動産に右一万一〇〇〇株の株券が交付されるまで続いた。また、右のように株券の現実の交付が遅れたのは、双方合意のうえ、株主名簿の書換手続の都合で株券の特定、取り分けが後日に延期されただけのことであり、当初の分割譲渡の基本方針が変更されたことはなかったのである。そして、残九〇〇〇株の株式は再び右貸金庫に保管され、次いで本件税務調査後の同年一〇月二四日、木村は、三井不動産の了解を得て自己が借り受けていた大和銀行堂島支店の貸金庫に保管替えし、単独で管理するようになった。

そして、相続人らと内外不動産との間で、昭和四九年一二月一〇日四五〇〇株の株式について売買契約が成立したため、木村は同月一六日内外不動産に四五〇〇株の株券を交付し、内外不動産は同人にその代金四億四五五〇万円を支払い、さらに相続人らと内外不動産との間で、昭和五二年一〇月五日残四五〇〇株の株式について売買契約が成立したため、同日木村は右四五〇〇株の株券を内外不動産に交付し、内外不動産は同人にその代金三億一九五〇万円を支払った。

(二) なお、三井中之島の貸金庫に保管された本件株式の株券が相続人ら代理人木村と三井不動産の共同管理であったことは前記基本合意等から明らかであり(右貸金庫の契約者は三井不動産であるが、三井銀行は信用ある第三者として貸金庫を管理しており、しかも三井不動産と木村の届出印が揃わなければ、その開閉に応じないのであるから、その実質は前記1の(一)の(3)の第三者預託と異なるところはないし、この保管方法の約定の趣旨とするところは、三年間にわたる取引であること、殊に将来二一名の相続人らの足並みが乱れることもありうることを考慮して、将来の株券引き渡しの履行を確保するということにあり、右保管方法はその趣旨に沿い当初の保管方法の約定に反するものではなく、昭和四八年六月五日本件株券が一括して木村から高橋に引き渡されたのも、この株券を右貸金庫に木村と三井不動産が共同保管するために預けられたものである。)、実際も、右貸金庫は相続人ら代理人木村と三井不動産大阪支店長との双方の届出印を押した開閉票の提示がない限り開閉できない約定であって、木村の届出印は同人自身が所持していたのであるから、三井不動産が単独で右貸金庫を開閉できる状態にはなかったのである。

3  控訴人らは、重加算税を課せられるような仮装行為をしたことはなく、そのような故意もなかった。

重加算税の規定である国税通則法第六八条の解釈上、納税者が仮装行為をすることを要するのであるから、納税者に仮装の認識があることを要するのであり、かつ納税者がその背後に隠された真実の行為による経済的利益を収めながら、それによる課税を免れるため積極的な不正手段を用いたことを要するであるが、控訴人らは、そもそも一括譲渡することなどは前記の事情から夢想だにしなかったところであり、また本件株式を一括譲渡した場合の経済的な利益を何も得ておらず、積極的な仮装行為もしていないのである。

かりに、控訴人らを含む相続人ら代理人木村が仮装行為をしたとしても、同人は本件株式の譲渡について相続人らから包括的な委任を受けていたわけではなく、必ず分割譲渡するという不動の方針に下にその範囲での事務処理権限を与えられていたに過ぎないから、木村が代理人としてした仮装行為を相続人らの仮装行為と同一視することはできないし、控訴人らを含む相続人らには、木村がそのような仮装行為をしていることについての認識がなかったことはもとより、これを認識しなかったことについての過失もないのである。

したがって、控訴人らに対して重加算税を課した本件決定は不当である。

(被控訴人らの答弁)

1  控訴人らの主張中、被控訴人らの従前の主張に反する点はいずれも争う。

2  控訴人らの主張3に対する反論

一 国税通則法第六八条の定める重加算税制度は、隠蔽又は仮装したところに基づく無申告又は過少申告による納税義務違反を防止し、もって申告納税制度を維持しその基礎を擁護するための行政上の措置であって、行為の反社会的、反道徳的な故に課する刑罰とは目的も性格も異なるものである。そして、第三者による不適正な申告あるいは不正手段について納税者が認識していたか否かによって重加算税が課されるか否かが区別されるならば、申告納税制度がその根底から覆ることになる。ただし、納税者が第三者の不適正な申告あるいは不正手段を認識していた場合にだけ賦課しうるものとするならば、不適正な申告あるいは不正手段を弄する可能性の多い第三者を選任して、その第三者の行為の確認、検討を怠るなど不誠実な納税者がそうでない納税者より有利に取り扱われることになり、かえって不適正な申告あるいは不正手段を奨励する結果となるからである。

二 ところで、控訴人らは、木村と三井不動産とが本件株式の一括譲渡を合意したことを了承して株式売買契約書及び覚書を作成(ただし、後者はその代理人木村作成)しながら、三回の分割譲渡である旨を仮装しようとして、昭和四八年六月五日に本件株式が全部三井不動産に引き渡されて譲渡された後も、本件株式を内外不動産に三回に分けて譲渡した旨の有価証券売買約定書及び有価証券取引書を作成し、本件株式が一括譲渡であるのに三回の分割譲渡であるかのように仮装したものである。

かりに、右仮装行為を木村が控訴人らの代理人としてしたものであったとしても、そのことを控訴人らが認識していたと否とにかかわらず、木村の右のような仮装行為に基づく重加算税は、納税者である控訴人らに賦課されるべきものであるし、またこれを賦課することができるのである。

三 証拠関係

原審及び当審の各訴訟記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人らの本訴請求は、いずれも理由がなく棄却すべきものと判断する。

二  その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決一三枚目表九行目の「第一一号証、」の次に「第一五号証」を加え、同裏四行目の「第一四、一五号証」を「第一四号証」と、同裏七行目の「証人木村正治」から同行の「各証言」までを「原審(第一回)及び当審証人木村正治、原審証人平真弥、原審及び当審(第一、二回)証人高橋良明の各証言、当審における控訴人山野員子本人尋問の結果」と、それぞれ改める。

2  同一四枚目裏二行目から三行目にかけての「分割譲渡するならば」を「分割譲渡することにすれば」と改め、同六行目の「一切の権限」の次に「(株式売買契約書の修正又は変更を含む。)」を、同一〇行目「となった。」の次に「なお右相続人中、控訴人湯目きよ江又は但野きよえこと但野きよ江は、昭和六〇年九月二〇日死亡し、その相続人但野慶子及び但野ろのが亡但野きよ江の地位を継承した。」を、それぞれ加える。

3  同一五枚目表四行目の「同年」を「昭和四七年」と、裏四行目の「譲渡期間」を「前記譲渡期間」と、それぞれ改め、同裏一二行目の「株式売買契約書」の次に「(前掲乙第二号証)」を加える。

4  同一六枚目裏一行目の「厳重に保管する」の次に「(なお、右契約と覚書の存在、内容、特に分割して全株式を譲渡する等の合意は税金対策上機密とされたものであり、当時三井不動産側でも、税務当局にこの機密が察知された場合の処置、同社の信用保持をいかにするかの対策は十分検討し、脱税幇助に問われるおそれがあることを懸念していたので、これらの合意については極秘にすることとしていたものである。)」を、同裏一一行目の「共同建築推進に関する覚書」の次に「(前掲乙第四号証)」を、それぞれ加える。

5  同一八枚目裏三行目から四行目にかけての「一〇億〇七八〇万円」を「一〇億七八〇〇万円」と改め、同一一行目の「基づくものであることを確認する」の次に「(ただし、厳密には同年五月中の予定収入額を加算する一方、同年六月までの予定経費等を減算しており、その売買代金単価も税金対策上前記のように、その売買の都度決定されたような形式をとったものであり、その売買代金支払期日については、三井不動産側の資金繰りの都合で決定された。)」を加える。

6  同一九枚目表一一行目の「二名」を「三名」と改め、同裏一二行目の「同日旧株券は廃棄された。」の次に「なお、前記六月五日御堂筋三井は、北尾商事から前記増資にかかる新株三万株の株券を受領しており、また木村から三井不動産に前記株券等が交付された直前である昭和四八年五月三一日、北尾商事に入金された増資払込金のうちから相続人らに対して資金貸付がなされ、これによって相続人らの相続税が完納されたので、そのころ相続税延納担保として本件土地に設定されていた抵当権が抹消された。」を加える。

7  同二一枚目表九行目の「確認書」の次に「(前掲乙第八号証)」を、同末行から裏一行目にかけての「貸金庫に保管していた旨の確認書」の次に「(前掲乙第九号証)を、それぞれ加える。

8  同二一枚目裏三行目の「木村は」から同四行目の「貸金庫に移管し、」までを「木村は、従来の貸金庫での管理では分割譲渡の形式を確保できないと考え、三井不動産に要求して以後は木村がこれを保管することとし三井不動産もやむなくこれを承諾したので、残りの新調旧株券を同人が以前から借りていた大和銀行堂島支店の貸金庫に移管し、」と改める。

9  同二二枚目裏七行目の「なお、」から同一〇行目の「抹消された。」までを削除し、同末行の「吸収合併された。」の次に行を変えて「14 控訴人らは、前述のような経緯から本件株式の売買は非課税扱いとなる三年間の分割譲渡であるとして、右譲渡所得金額についていずれも確定申告しなかった。」を加える。

10  同二三枚目表一行目の「証人木村正治」から同二行目の「各証言中には」までを「原審(第一回)及び当審証人木村正治、原審証人平真弥、原審及び当審(第一、二回)証人高橋良明の各証言、当審における控訴人山野員子本人尋問の結果中には」と改める。

11  同二三枚目裏九行目の「昭和四八年六月五日」の次に「予備株券を含めて」を、同一一行目の「相続人ら及び三井不動産が」の次に「税金対策上」を、同一二行目の「契約書等の存在及び内容」の次に「、特に分割して全株式を譲渡する等の合意」を、同一三行目の「きたこと」の次に「、本件株式の売買価額は昭和四八年三月三一日現在における北尾商事の純資産を評価して一括決定されたが、厳密には同年五月中の予定収入額を加算する一方、同年六月までの予定経費等を減算して決定されたが、その売買代金単価は税金対策上、分割売買の都度決定したような形式をとったものであること」を、それぞれ加える。

12  同二四枚目表三行目から四行目にかけての「木村とすれば三井不動産の指示提案に従うほかない立場に置かれていた」を「木村とすれば、昭和四八年六月五日本件株式の株券二万株を三井不動産に一括して引き渡した後は、その売買代金を受領するまでの間、全株券は既に三井不動産が取得しながら売買代金(総額一九億七七一〇万円)は受領していないという状態で、東税務署職員が貸金庫を調査した昭和四九年一〇月二三日時点においても、売買代金のうち八億九九一〇万円を三井不動産から受け取らなければならない状況にあって、到底三井不動産の指示、提案に背くことはできない立場に置かれていた」と、同九行目の「本件株式の株券が」から同一二行目の「というべきである。」までを「本件株式の株券が前記のように北尾商事の相続人らに対する貸付金の担保であるにせよ(前掲乙第九号証)、北尾商事の代表者でもある木村が相続人らからその株券の保管を委託されていたのであるから、殊更その株券を三井不動産との共同保管とする必要はなかったというべきである。なお控訴人らは、右共同保管の趣旨は将来の株券引き渡しの履行確保のためであるとも主張するのであるが、前掲乙第四号証(信用ある第三者に預託)、同第九号証の約定あるいは確認の趣旨と異なるものがあるのみならず、株券引き渡しの履行確保という点では、税金対策上分割譲渡の形式をとる一方で、早期に一括して株式の譲渡及び株券の交付がなされるということ(前掲乙第八号証及び原審証人常岡忠之の証言)も十分考えられるところであるから右主張もにわかに採用できない。」と、それぞれ改める。

13  同二四枚目裏六行目の「従前の方法では」を「従前の三井不動産との共同管理の形では」と、同八行目の「ためと考えられるので」を「ためであるから」と、それぞれ改め、同九行目の「なお」から同二五枚目表一行目の「と考えられる。」までを削除する。

14  同二五枚目表三行目と四行目にかかる「右株券が」から同五行目の「譲渡されたもの」までを「本件株式については、昭和四八年六月五日三井不動産に対し、全部一括して株式の譲渡及び株券の交付がなされたもの」と改める。

15  同二六枚目表一〇行目の「なお、」を「そして、」と、同一一行目から一二行目にかけての「(甲第七号証)の存在は右認定を左右するものではない。」を「(甲第七号証)も前記証拠と対比すると右認定を左右するに足りない。」と、それぞれ改める。

16  同二七枚目表一三行目の「これと同額」を「その金額と同額(控訴人村山真一については、その金額の範囲内)」と、同裏二行目の「次に、」から同六行目の「いうべきであるから」までを「次に、前記認定事実のとおり、控訴人らを含む相続人らから本件株式の売却に関する一切の権限を一任された代理人木村は、本件株式が昭和四八年六月五日三井不動産に全部一括して譲渡されたのに、それが非課税扱いとなる三年間の分割譲渡であるかのように仮装し、控訴人ら相続人らがこれに基づいて右譲渡所得金額について確定申告しなかった以上は、控訴人らがこれを認識していたと否とにかかわらず(前記認定事実を総合すれば、控訴人らを含む相続人らは、少なくとも概括的には本件株式譲渡が仮装の分割譲渡であることを認識していたものと認められるが、かりにそうでないとしても)、木村の前記行為は控訴人ら相続人らの行為と同視され、右譲渡所得金額を申告しなかったことに伴う重加算税が課せられるものというべきであり、」と、同裏一二行目の「右同日」を「前記昭和四八年六月五日」と、それぞれ改める。

三  そうすると、原判決は相当であって、控訴人らの本件控訴はいずれも理由がないので棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第九五条、第九三条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 篠原幾馬 裁判官 長門栄吉 裁判官 永松健幹)

処分一覧表

〈省略〉

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